医療事故をなくしたい

手術の送管ミスで健康な前歯を失った患者さん

歯科で働いていた時に、右上の前歯にインプラント治療を希望している患者さんが来院しました。

事情をきくと、総合病院で全身麻酔をかけての手術を受けた後から急に前歯がぐらぐらし始めたということでした。担当医に確認すると、送管したパイプがその歯に強く当たりすぎていたのかもしれない、とだけ説明を受け、特にそのほかの対応はなかったそうです。調べてみると、実は医療事故の中でも送管によるものはそれほど珍しくはないようです。

レントゲン撮影をしてみると、他の歯は健康なのに、右上の前歯1本だけが今にも抜けそうな状態になっていました。歯科医師の診断によると、送管パイプの強い負荷が極端にその1本に集中したために炎症を起こし、その歯を支えている歯槽骨が溶けた状態になっているということでした。

歯槽骨は手や腕の骨と違って骨折した後修復するということはなく、一度溶けると元には戻りません。それでも喪失量が少なければ歯茎を切開して人工骨を移植し、歯槽骨の再生をはかることができるのですが、それでは対応できないほど骨はなくなっていました。

そのため、総合病院での手術を受けるまで、歯周病でも虫歯でもない全く健康だったと思われる歯は、送管ミスがあったばっかりに抜歯せざるを得なくなってしまったのです。今は歯を失ってもインプラントやブリッジなど、失った歯を補う方法はたくさんありますが、どんなに高度な治療でも自分の歯より良いものはありません。たとえ治療をしても自分の歯が戻ってきたことにはならないのです。

その患者さんは結局インプラント治療を受けられましたが、送管ミスという医療事故によって歯を失い、本来必要のない労力とお金をかけることになってしまいました。

Posted 2016/08/12

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